個別支援計画書の書き方|質の高い支援につながる5つの手順

こんにちは。療育支援者の学校 主宰の西村猛(理学療法士)です。

個別支援計画書を作成するとき、「何から書き始めればいいのか分からない」「毎回、似たような目標になってしまう」「支援内容がこれでよいのか自信がない」と感じる支援者の方は少なくないと思います。

療育事業所のコンサルティングでも、個別支援計画書の書き方についてご相談を受けることがあります。

その際、私はよく、「なぜ、この目標にしたのですか?」とお聞きします。


目標そのものが間違っているかどうかを確認したいというのではなく、その目標が、子どもの評価や現在の困りごとから、どのような過程を経て導かれたのかを確認したいためです。


私は、個別支援計画書を作るうえで大切なのは、文章をきれいに整えることではなく、考える順番を間違えないことだと考えています。

この記事では、評価から支援内容を決めるまでの流れを、5つの手順に分けて解説します。

個別支援計画は目標から考えない

個別支援計画を作るとき、最初に目標やプログラムを考えてしまうことがあります。

例えば、下記のような目標を設定することはないでしょうか。

  • 集団活動に参加できるようにする
  • コミュニケーション能力を高める
  • 友達と仲良く遊べるようにする
  • 体幹を強くする

どれも、一般的には大切なことですが、その子にとって今、本当に優先するべき目標なのかは、評価をしなければ分かりません。


私は、個別支援計画を作るときに、プログラムは一番最後に考えるものだとお伝えしています。

評価をする前から「体幹を鍛えましょう」「社会性を伸ばしましょう」と決めてしまうと、どの子にも同じような目標や支援内容を当てはめることになります。

個別支援計画は、既存のプログラムに子どもを当てはめるものではありません。

子どもの状態を理解した結果として、必要な目標や支援内容が導かれるものです。

【手順1】子どもの現在の状態を評価する

最初に行うのは、子どもの現在の状態を知るための評価です。

評価というと、できないことや苦手なことを探すイメージを持たれることがありますが、違います。

「できないこと一覧」を作る作業ではありません。

  • できていること
  • 得意なこと
  • 興味を持っていること
  • 身体や運動の発達
  • 姿勢や手指の使い方
  • 感覚の特徴
  • 言葉やコミュニケーション
  • 認知や遊び
  • 社会性
  • 気持ちの動きや性格

などを広く見ながら、その子の全体像を捉えていきます。

つまり、子どもの困りごとだけでなく、その子がどのような場面で力を発揮できるのかを見ることも大切になります。


事業所では難しそうに見えても、家庭や園ではできていることもあります。

反対に、事業所ではできていても、生活場面では困っていることもあります。


このように一つの場面だけで判断せず、保護者から家庭での様子を聞き、必要に応じて園や学校の情報も確認します。


評価とは、その子を細かく分類することではなく、その子をより正確に理解するための材料を集めることから始めるものです。

【手順2】評価結果を読み取る

評価を行っただけでは、支援にはつながりません。

ここで重要になるのが、評価結果をどのように読み取るかです。

私は研修などで、よく、「評価だけでは支援内容は決まりません」とお話ししています。


評価によって分かるのは、子どもの現在の姿です。

しかし、支援を考えるためには、その姿がなぜ起きているのかを考える必要があります。


例えば、「椅子に座り続けることが難しい」という姿が見られたとします。

その背景には、以下のような複数の理由が考えられます。

  • 姿勢を保つことに負担がある
  • 周囲の音や動きが気になりやすい
  • 活動内容が難しすぎる
  • 活動の見通しを持ちにくい
  • 疲労しやすい

表面に見えている行動だけを変えようとするのではなく、その背景に何があるのかを考えます。


ただし、原因を最初から決めつけてはいけません。

「このような理由があるのではないか」と仮説を立て、実際の支援の中で確かめていきます(療育場面は、仮説の検証でもあります)。

【手順3】課題を整理して優先順位を決める

子どもを広く評価すると、複数の課題が見えてくることがあります。

しかし、見つかった課題をすべて個別支援計画に入れればよいわけではありません。

課題が多すぎると、何を優先して支援するのかが分からなくなります。


そこで、以下の視点からチェックします。

  • 今すぐ対応する必要があるか
  • 日常生活への影響が大きいか
  • 他の発達や活動の土台になるか
  • 本人や保護者が困っていることか
  • 現在の発達段階に合っているか

目立つ困りごとが、必ずしも最初に取り組むべき課題とは限りません。

例えば、集団活動への参加が難しい子どもに対して、すぐに「集団参加」を目標にするのではなく、その前に姿勢、理解、感覚、見通しなど、参加を難しくしている土台の部分を見る必要があるかもしれません。


どの課題を優先するかは、支援者によって意見が分かれることもありますが、それ自体は問題ではありません。

大切なのは、なぜその課題を優先するのかを説明できることです。

【手順4】短期目標と長期目標を設定する

取り組む課題が決まったら、目標を設定します。

短期目標は、次回の個別支援計画の見直しまでに目指す姿です。

おおむね3か月から6か月程度を一つの目安として考えます。


長期目標は、その先の成長を見据えた目標です。

半年から1年程度だけでなく、必要に応じて就学後や数年後の姿まで考えることもあります。

子どもの発達は、今この瞬間だけで完結するものではありません。

3歳の姿は6歳につながり、6歳の姿はその先の生活につながっています。

だからこそ、目の前の目標だけではなく、この支援が将来の何につながるのかを考えることが大切です。


長期目標を考え、その目標に近づくために、今どの段階を短期目標にするのかを整理すると、目標同士がつながりやすくなります。


また、「社会性を伸ばす」「コミュニケーション能力を高める」といった表現だけでは、どのような変化を目指すのかが分かりません。

支援後に振り返ることができるように、子どもの具体的な姿で目標を設定します。

【手順5】目標に合った支援内容を考える

支援内容やプログラムを考えるのは、最後です。

評価によって子どもの状態を知り、その背景を考え、優先する課題と目標を決めたうえで、必要な支援を考えます。


支援内容を書くときは、以下の点を具体的に書くようにします。

  • どのような場面で行うのか
  • どのような環境を整えるのか
  • 支援者がどのように関わるのか
  • どの程度の援助を行うのか
  • どのような変化を確認するのか

「声をかける」「励ます」「できたら褒める」という内容だけでは、どの子にも当てはまってしまいます。

声かけや励まし、肯定的な関わりは大切ですが、個別支援計画に必要なのは、その子に対して、なぜその支援を行うのかが分かることです。


評価、課題、目標、支援内容が一つの流れとしてつながっていれば、支援者も保護者も、支援の意図を共有しやすくなります。

マクロとミクロの視点を行き来する

個別支援計画を作るときには、目の前の小さな課題を見る視点と、子どもの発達全体や将来を見る視点の両方が必要です。


目の前の動作や具体的な困りごとを見るのが、ミクロの視点です。

一方、これからどのように成長してほしいのか、就学や将来の生活にどうつながるのかを見るのが、マクロの視点です。

支援では、細かく見るだけでも、広く見るだけでも不十分です。

目の前の小さな変化を見ながら、その変化が将来の何につながるのかを考える。

そして、将来像を考えながら、今どのような小さな一歩が必要なのかを考える。


この二つの視点を行き来することで、短期目標と長期目標がつながった個別支援計画になります。

作成後に確認したいポイント

個別支援計画書が完成したら、次の点を確認します。

  • 子どもの強みと課題の両方が反映されているか
  • 評価結果から課題が導かれているか
  • 課題の優先順位を説明できるか
  • 短期目標と長期目標がつながっているか
  • 支援内容が目標達成につながっているか
  • 誰にでも当てはまる内容になっていないか
  • 保護者にも理解しやすい表現になっているか
  • 次回の見直しで振り返ることができるか

そしてまとめとして「なぜ、この目標と支援内容になったのかを説明できるか」を自己確認しましょう。

ここが説明できれば、評価から支援までの流れは、ある程度整理できていると考えられます。

まとめ

個別支援計画書は、目標やプログラムから書き始めるものではありません。

基本的な流れは、次のとおりです。

  1. 子どもの現在の状態を評価する
  2. 評価結果を読み取る
  3. 課題を整理して優先順位を決める
  4. 短期目標と長期目標を設定する
  5. 目標に合った支援内容を考える

個別支援計画を作るうえで大切なのは、文章の上手さではなく、子どもの姿をどう捉え、何を課題と考え、なぜその目標と支援を選んだのかという、支援者の思考がつながっていることです。

個別支援計画は、子どもの現在地を確認し、これからどこへ向かうのかを、支援者と保護者が共有するためのものです。


だからこそ私は、個別支援計画は単に「行政指導対策として書く」のではなく、お子さんの現在地と未来予想図を保護者の方に分かりやすく提示する「お子さんだけの企画書」だと思っています。

動画でも詳しく解説しています

個別支援計画書を作成する際の考え方について、動画でも解説しています。

評価結果を読み取り、課題を整理し、目標や支援内容へつなげていく流れを確認したい方は、こちらをご覧ください。


個別支援計画の良し悪しを分ける考え方や、評価と見立てがつながっていない計画の問題点については、以下の記事で詳しく解説しています。

併せてご覧ください。

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