療育で「成功体験を増やしましょう」だけでは足りない理由

こんにちは。主宰の西村猛(理学療法士・児発管)です。

療育や発達支援の現場では、「成功体験を増やしてあげましょう」という言葉をよく耳にします。

もちろん、成功体験は大切です。

何度やってもうまくいかない、周囲から注意される、失敗するたびに自信をなくしていく。

そんな経験が続けば、「どうせできない」「もうやりたくない」と思ってしまうこともあるでしょう。


だからこそ、子どもが「できた」と感じられる経験をつくることには意味があります。

ですが私は「成功体験を増やす」という言葉だけでは、少し足りないと思っています。


なぜなら、「できた」という結果を増やすことと、「やってみよう」と思える力が育つことは、必ずしも同じではないからです。

簡単なことをたくさんやれば、成功体験になる?

例えば、子どもが少し難しい課題に取り組んでいるとします。

失敗すると自信をなくすから、確実にできる簡単な課題に変える。

そして、できたら「すごいね」「できたね」とたくさん褒める。


もちろん、こうした関わりが必要な場面もあります。

でも、ずっと「必ずできること」だけを続けていればよいのでしょうか。

あるいは、子どもが困った瞬間に大人が手伝い、最後まで完成させて「できたね」と伝える。結果だけを見れば、これも「成功」です。

けれども、大切なのは「できた」という結果だけではありません。その子自身が、その経験をどう感じているのかも考える必要があります。

同じ「できた」でも、中身は違う

同じ「できた」でも、その中身はさまざまです。

最初から簡単にできたことと、少し難しかったけれど自分で考えてできたことでは、子どもにとっての経験は違います。


最初はうまくいかなかったけれど、やり方を変えたらできた。少し助けてもらったけれど、最後は自分でできた。

そんな「できた」もあります。

私は特に、「自分でやってみた」「ちょっと難しかったけど、できた」「さっきはできなかったけど、今度はできた」という感覚を大切にしたいと思っています。


誰かに成功させてもらったというより、自分がやってみたことで何かが変わったという実感です。

こうした経験が、「じゃあ、次もやってみよう」という気持ちにつながっていきます。

失敗しないことが、本当に大切なのか

「成功体験を増やそう」と考えると、どうしても失敗を避けたくなります。

間違えそうになったら声をかける。困っていたらすぐに助ける。失敗しないように先回りする。


もちろん、失敗が続いてつらくなっている子どもには、大人のサポートが必要です。

一方で、失敗そのものが悪いわけではありません。


やってみたけれど、うまくいかなかった。では、どうしよう。もう一度やってみる。違う方法を試してみる。それでも難しければ、誰かに「手伝って」と言ってみる。

こうした経験もまた、子どもにとって大切なものです。

「失敗しないこと」ではなく、「失敗しても大丈夫」と思えること。

うまくいかなかったら終わりではなく、「もう一回やってみよう」と思えることも、子どもがこれからさまざまなことに挑戦していくための力になります。

「もう一回やってみよう」も大切な成長

療育では、「何ができるようになったか」という結果に目が向きやすいものです。

もちろん、できることが増えていくことは大切です。


でも、それと同じくらい、「やってみよう」「もう一回やってみよう」「今度はこうしてみよう」といった姿にも目を向けたいと思います。

また、自分だけでは難しいときに「ちょっと手伝って」と言えることも大切です。


成功体験というと、「できた!」という瞬間だけに注目しがちです。

しかし、その前には、挑戦したり、迷ったり、失敗したり、工夫したりする時間があります。


そのプロセスも含めて、子どもの経験なのだと思います。

支援者は「成功させる人」ではない

支援者が子どもを成功させようとしすぎると、知らないうちに大人が主役になってしまうことがあります。

失敗しない課題を用意して、困る前に助け、最後まで完成できるように導いて、「できたね」と褒める。

こうした支援が必要な場面はもちろんありますが、いつも大人が成功まで連れていく必要はありません。


少し待ってみる。子ども自身が考える時間をつくる。試してみる時間をつくる。うまくいかなければ、もう一度やってみる時間をつくる。そして、本当に困っているところでは手伝う。

支援者の役割は、子どもに成功をたくさん与えることだけではなく、子どもが安心して挑戦できる環境をつくることでもあると思います。